《 平成23年7月25日(月)・2日目 》 


 昨日遅かったにも係らず、朝6時に目が覚めた。
 身支度を整えて、さっそく朝の散歩に出かける。

 サンモリッツ湖が目の前にあり、遊歩道が広々と整備されているので、湖畔の散歩は快適である。ジョギングしている人や、犬の散歩、日本人旅行者もいる。それでも人は少ない。静かな湖畔である。顔が合った人には挨拶を交わす。返ってくる返事は笑顔で「モーニング!」が多い。

 部屋に戻り朝食を済ませて、8時過ぎにホテルを出発、連泊なので荷物はリュックだけでいい。今日は3大特急の一つであるベルニナ線を走破する。サンモリッツからイタリア領ティラーノまでの2時間少々の列車の旅であるが、途中の景観は世界自然遺産に登録されているという魅力的なルートである。

 最初は窓越しにビデオや写真を撮っていたが、途中から窓が開くことが分かり、それからは窓を開けての撮影に忙しくなった。モルテラッチ氷河からベルニナアルプスの山々、ビアン湖、ループ橋等々、さすがの景観に休む暇がないほどで、あっと言う間の2時間であった。

 ティラーノに着いてすぐに昼食となる。レストランでワインを頼み、初めてのスイスワインかと一口含んでラベルを調べたらイタリアワインであった。そう、ここはイタリア領であった。国境を 越えてもパスポートのチェックもないためにイタリア領であることを完全に失念していた。

 食後、こんどはバスで戻り、ディアボレッツア展望台に向かう。
 ロープウエイで展望台に上る。ここからは三つのピークが綺麗に並んだピッツ・パリュ(3,905m)、見事な稜線を持ったピッツ・ベルニナ(4,049m)や、ペルス氷河、モルテラッチ氷河がすぐ目の前に広がる、すさまじいほどの景観である。山頂周辺は少しガスがかかっていたが、目の前に広がる荘厳な白銀の世界は見事であった。

 バスに10分ほど乗って、今度は今見たモルテラッチ氷河を下から見に行く。
 モルテラッチに着いて、女房はゆっくり歩きたいというので、一人で先に進む。氷河は年々溶けていって、その記録が道沿いに残してある。一番手前には「1878年」があり、氷河の手前には「2010年」とあった。氷河の先端は、そこからももう10mほど後退している。

 氷河は見事な景観を見せていた。白い雪の塊に悠久のロマンを感じるものの、澄んだ青色をした部分は何だか物哀しげな色合いに見えた。氷河がだんだんと後退してきているのを憂えているのか・・・。

 地球温暖化の影響であろうと思われるが、そう言えば、これから日本はどうするのか、地球温暖化対策の主力であった原子力発電が駄目になってしまえば、到底温暖化対策の削減目標を達成することができないことは目に見えている。自然エネルギーにそれほど期待はできない。となれば、これまでの石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料への依存が増えていき、温暖化ガスの排出量は削減どころかますます増大していくことになる。
また、著しい経済発展を遂げてきている中国やインドも大量に化石燃料を使いだすはずであり、資源の争奪戦が起こり、当然ながら価格も急騰していくことになる、もはや日本の経済発展は望めそうもなく、国民生活の現状維持さえ難しくなってきそうである。では、当面どうすればいいのか。分かり切ったことではあるが、原子力の安全性を高めて、少なくとも現状レベルのエネルギーの安定供給を図ることである。菅総理は原子力は見直すと強調しているが、時の総理として発言すべきは、「当面は原子力の安全性を高めて、現状を 維持していき、原子力に代替するエネルギーが確保されてきた段階で原子力は見直していく。」という内容であろう。将来がまったく見えないようなことを言って欲しくないものである。
 スイスまできてこのような思いをするとは・・・。氷河に何とか頑張ってと声をかけて引き返す。

 氷河の先端から少し戻ったところで女房がやってきた。先端まで行くには時間が厳しくなりそうなので、いかにも氷河の先端に来たと見えるように氷河を背景に写真をとって、そのまま引き返す。

 サンモリッツに戻り、ホテルへ。
 再びロビーへ集合してレストランへ食事に出かける。ここでやっとスイスワインを飲む。スイスワインは生産量が少ないので、なかなか輸出まで回らないらしい。よって、少し購入して帰ることにしよう。帰って、ビデオ編集が終わった時に、改めてスイスワインを飲みながらビデオで旅情を味わってみるために。   


  ※ ホテル : サンモリッツ ・ LA MARGNA (ラ・マーニャ)