【    鹿島槍ヶ岳 ・ 爺ヶ岳   】   2,889m & 2,670m 

 〜平成28年8月22日(月)〜

 
今年の日本アルプス登山は北アルプスの後立山連峰の盟主である「鹿島槍ヶ岳」を踏破する。
 山小屋2泊で、爺ヶ岳を経由していくコースである。

 22日9時過ぎに空港へ。台風9号が関東を直撃するコースを進行している。今回は福岡空港から信州まつもと空港であったため、幸いにもこの被害にあわずに12時前に無事松本に着いた。

  今回のツアーは総勢13名、男性が10名、女性が3名であったが、平成16年の白馬3山踏破時の坂井氏と工藤さんとまた同行することになった。白馬はツアーメンバー4人に添乗員が1人、山ガイドが2人という少人数のツアーであったが、その4人の中の3人が再会するというまさに奇遇の登山となった。

 空港からバスに乗り込み、松本駅の「月見・五味味めし弁当」を食べながら「大町山岳博物館」へ。ここには「山の成り立ち」から「山の生き物」、「山と人とのかかわり」などをテーマにコーナーが設けられている。3階にある展望ラウンジからは明日登る「爺ヶ岳」や「鹿島槍ヶ岳」が 誇らしげにその雄姿を見せていた。

 今日は大町温泉郷にあって最大規模を誇る「立山プリンスホテル」に宿泊する。15時前にホテルに着いた。3人部屋で、同室は中牟田氏と谷口氏。中牟田氏は79歳になられるが、なかなかお元気な方である。 剣岳を申し込んだら年齢制限で断られたとか。もう一人の谷口氏は若い頃に剣岳だけでも7回も登ったというつわもの登山家であった。

 宴会場で会食が始まってしばらくして自己紹介が始まる。名前を聞くも覚えられない。明日からの登山の最中にそれぞれ確認していくこととしよう。


 
〜平成28年8月23日(火)〜

 6時半からバイキングでの朝食、朝の内は雨が降っていたが、出発する7時半には雨は上がっていた。 さすがに晴れ男と密かに自信を強める。(ここに記載しているから密かではないか・・・。)
 タクシーに分乗して扇沢にある登山口に向かう。

 今回のツアーの添乗員は女性の砂川さん、山ガイドは松山氏であった。この松山氏が遭遇された壮絶な出来事はまた後で紹介するが、この松山氏も晴れ男であった。
 メンバーの中に「金納」という珍しい名前の方がおられたので、小生のかっての職場にも大牟田から通勤されていた若い女性の方がおられたがご存じないかと聞くと、自分は久留米であるが、大牟田には分家の一族がおられるとのことで、親戚筋になるとのこと。カリブ海クルーズ旅では松延さんという方がおられたが、世の中は狭いものである。

 全員でストレッチをして8時に出発、柏原新道登山口から登り始める。種池山荘までは標準行程では3時間半から4時間ほどであるが、ゆっくり登山なのでかなり時間がかかりそうだ。

 登山口からはモミジ坂と魅力的な名前が付いているがかなりな急登である。1時間半程登ったところで、ケルンを過ぎると少し傾斜は緩やかになってきた。それでも一途な登り道である。
 休憩を繰り返しながら、登り続ける。首に巻いたタオルを絞ると汗がしたたり落ちるほどになった。水分の補給を怠らないように気を付ける。

 12時20分、無事「種池小屋」に着いた。4時間20分かかったが、登山口が1330m、山小屋が2450mで、その標高差は1120mあるので、まずまずの行程であった。 ツアーメンバーの中の2名が遅れて到着された。この女性メンバーは、これ以上の登山は無理であろうと判断され、この山小屋に連泊されることになった。

 ここでおにぎり弁当を食べて、小休止する。時折ガスがかかるが雨は大丈夫なようだ。
 13時に出発、周辺はお花畑で、チングルマの花の名残が当たり一面に広がり、風になびいている。

 1時間ほどで爺ヶ岳南峰着、更に20分ほどで中央峰着、ここからは今登ってきた南峰の方が高く聳えているように見える。南峰以外は残念ながらガスに覆われて あまり見晴らしは効かなかった。
 しばらく歩くと岩山の斜面にライチョウが4羽ほど挨拶に出てきた。しばらくライチョウの姿をカメラに収めながらくつろぐ。ライチョウはあまり人を警戒する様子もなく、 気ままにえさをついばんでいた。
 爺ヶ岳は3峰からなるが、北峰はこのライチョウの保護のために入山禁止となっていた。 
 
 赤岩尾根分岐点を過ぎて、15時40分に冷池小屋に着いた。ストレッチもせずに男性10人一緒に部屋へ。
 荷物を整理し、衣服等を乾燥室へ。夕食の時間が近くなったので生ビールは我慢することとした。

 17時から夕食となる。生ビールで皆と乾杯する。最高に至福の時である!
 この山小屋では、水1リットルが無料サービスとなっている。明日の朝は混みそうなので、今日の内に確保しておいた。今日は朝の一途な登り道でかなりお疲れのようで、皆、早めのご就寝であった。     
  

 
〜平成28年8月24日(水)〜
 
 4時に起きる。今日はいよいよ「鹿島槍ヶ岳」踏破である。 
 朝日が雲を赤く染めている。ガスはかかっているが雨にはならないようだ。

 5時から朝食、6時過ぎに小屋を出発、快調に歩き始める。
 7時20分に「布引山」山頂着、写真をとってさらに進む。
 山頂周辺には雲がかかっているものの、立山連峰が聳えている。手前の峡谷は黒部で、左手に黒部ダム、右手はトロッコ列車の始発駅である宇奈月になる。
 途中、太陽が顔を出し、ブロッケン現象(太陽が背後から射し込み、影の側にある雲粒や霧粒によって光が散乱され、見る人の周りに虹に似た光の輪が現れる現象)が現れた。ジャストタイミングで写真を撮ることもできた。これだけ明確な映像 が撮れることは珍しい。

 8時10分に「鹿島槍ヶ岳・南峰」山頂着。順調な行程であった。
 登頂記念の写真撮影に忙しい。工藤女史は年賀状用の写真にと張り切っておられた。

 来た道を戻り、10時10分に冷池小屋に戻って来た。ここで昼食となる。10時とは早く感じるが、朝食は5時に済ましたので、既に5時間経っている

 小屋が準備してくれていたチラシ寿司の弁当を食べる。

 しばらく休んで11時に出発、登りになると途端に足が重くなる。爺ヶ岳をバイパスし、種池小屋を目指す。
 2時間ほどで、13時過ぎに無事小屋に着いた。今日はこれから時間がたっぷりあるので、生ビールを楽しめる。
 男性は5人づつ別れて部屋に入る。また荷物を整理し、衣類を乾燥室に持っていく。

 さて、「生ビール!」 と張り切って外のテラスに出ると誰もいない。探すと皆小屋内の談話室で飲んでいた。何とももったいない話である。小生は生ビールとつまみを調達してテラス席へ。一人宴会を始める。

 その内に、今回初めて日本アルプス挑戦の橋本氏が見えた。また、工藤女史が缶ビールを持ってこられた。中牟田氏が見えた。更にガイドの松本氏が加わり賑やかになった。
 そこに談話室内での宴会を終えた金納氏と長田氏が見えた。金納氏のお連れの上村氏はお休み中か?
 金納氏が加わるとまた一層にぎやかになった。

 その内に雨がパラつきだしたので一担お開きとする。
 部屋に戻り、スマホを確認すると電波が届かない。確認のために外に出ると、雨も上がっており、工藤女史、松本氏、金納氏の4人でまた宴会が始まった。金納氏が気前よくアルコール類を調達してこられた。
 ここでガイドの松本氏の壮絶な話が始まった。昨年の4月に、北アルプスの涸沢岳で友人が滑落した。それを助けようと本人も100mも滑落、腕の骨が飛び出す大ケガを負ったが、自力で下山し、救助を求めた後で気を失ったという。お連れの方はその後死亡が確認された。新聞にも報道されたとのことで、ネットで確認すると昨年の4月30日付の読売新聞にその記事があった。
 今ではまた普通に山ガイドをされているが、松本氏は元々水道工事屋さんで、合わせて山ガイドの会社も経営されている。ガイドはいつでも受けますよとのこと。
 工藤女史は、今年はこれから岩木山から八甲田山の踏破、更には屋久島の宮之浦岳も予定していると、なかなか活発である。 金納氏は宮之浦岳を5時間半で往復されたという健脚である。また金納氏の連れの上村氏は今でもフルマラソンに参加されているという。 

 17時から夕食となる。また生ビールを飲む。明日は下山だけだから大丈夫か。
 夕食のメニューが昨日と全く同じであった。食事は山小屋での大きな楽しみの一つであるから、同じ経営の山小屋とはいえ、連泊の場合はメニューを変えるくらいの配慮は欲しいものである。
 それでもビールはうまい!

 食後、テレビのニュースで明日の天気を確認する。信州の天気予報は、北アルプス、南アルプスと山ごとに細かく予報が流される。明日も何とか雨にはならないようだ。

    
 〜平成28年8月25日(木)〜
 
 4時に起きる。星が綺麗に出ている。5時から朝食、早々に済ませて外に出る。
 今日は天気がよく、見晴らしがいい。5分ほど爺ヶ岳方面に歩くと、「鹿島槍ヶ岳」や「剣岳」を見事に眺望することができた。
 小屋の前では、南北の八ヶ岳連峰や、はるかかなたには富士山も姿を見せていた。

 6時に小屋前出発、柏原新道を一途に下っていく。
 順調な下りで、9時に下山してきた。後半グループが若干遅れて下山、9時45分にバスに乗り込み、10時に大町温泉郷の「薬師の湯」へ。露天風呂は最高に気持ちがいい。若干日差しが強いが、疲れた身体にはその日差しも心地が良い。 今回は台風と一緒に来たものの雨にも会わず(北アルプスで全く雨に合わないのは珍しいことである。)、メンバーにも恵まれ最高にいい山旅になった。

 温泉から上がって、休憩室でまた宴会を始める。生ビールにから揚げ、2杯目の生ビールにモツ煮込みと酒が進む。すると、上村氏と金納氏が交代で冷酒の小瓶を買ってこられ、更に飲み進むこととなった。上村氏は女性の方々へのおみやげが大変だと話されていた。上村氏と金納氏のコンビは漫談家になれそうである。
 締めの山菜そばで無事大宴会を終えた。上村氏がせっせと後片付けされる。女性にもてるはずである。

 12時半に温泉出発、30分ほどで「大王わさび農場」へ。下界の暑さを改めて身に浴びながら農園内を歩く。名水百選の水をたっぷりと飲んで、ためしにポケモンGoを起動させると2匹ゲットできた。
    
 14時半に農園出発、14時50分に空港へ。
 おみやげを買って、16時半の定刻発、18時10分に無事福岡空港へ着いた。
 皆とまたどこかで会いましょうと別れの挨拶をし、地下鉄へ。女房の迎えの車に乗り込んで、19時前に帰宅した。
 
 さて、今年の日本アルプスはこれで終わりだが、10月には尾瀬の燧ヶ岳と至仏山の山旅が待っている。秋の尾瀬の散策も楽しみであるが、尾瀬の秋模様をそれぞれの山頂から眺めることができるとは! 最高の山旅になりそうである。今回はビデオも持っていくこととしよう!!!

 

 登り;9時間10分(爺ヶ岳経由)  下り:6時間 30分